分科会 要旨


分科会第一群    8月31日(土)
【分科会第一群 第一会場】
耳鼻咽喉科疾患のリハビリテーション 司会のことば
1)顔面神経麻痺のリハビリテーション(病的共同運動の予防)
2)めまい・平衡障害に対する平衡訓練
【分科会第一群 第二会場】
耳鼻咽喉科領域の遺伝疾患と遺伝相談 司会のことば
1)徳島大学医学部附属病院遺伝相談室の実際と問題点
2)遺伝性難聴と遺伝カウンセリング
3)口唇口蓋裂の遺伝相談
【分科会第一群 第三会場】
――初歩から学ぶ補聴器講習―― 司会のことば
1)補聴器の適合について 特に不適合なケース
2)補聴器の値段について
3) ハーフゲインを中心としたフィッティングについて
4)補聴器の故障の原因について
【分科会第一群 第四会場】
小児言語障害の見方 司会のことば
1)小児言語障害の見方
【分科会第一群 第五会場】
(職員対象講習会) 司会のことば
職員のための聴力検査実習

 分科会第二群
【分科会第二群 第一会場】
旅行医学 司会のことば
1)旅行医学と旅行者感染症
2)航空機内の医療
【分科会第二群 第二会場】
私の診療上の工夫 司会のことば
1) めまい問診による内耳性障害、中枢性障害の鑑別について
2)日常診療で簡単に出来る細菌薬剤感受性検査
3)内視鏡を大いに活用しよう
4)耳鼻咽喉科疾患の診断と治療  ――忘れてはならない耳鼻咽喉科所見の観察――
5)喉頭を中心に、画像ファイリング・外来小手術の工夫
6)比較的安価にできる画像ファイリングシステムについて
7)快適で効果的な医院をめざして
【分科会第二群 第三会場】 
――歩進んだ補聴器講習―― 司会のことば
1) アナログ補聴器とデジタル補聴器の違いについて
2) 不快レベル、快適レベルについて
3) 騒音処理のメカニズムについて
4) 言葉の明瞭度について ハーフゲインを超えるフィティングは可能か?
【分科会第二群 第四会場】
超音波断層検査 司会のことば
1)頭頸部における超音波検査
【分科会第二群第五会場】
(職員対象講習会) 司会のことば
診療所における接遇
全体集会 要旨  9月1日(日)  
人類の誕生と未来を考える条件 ――天文学の立場から― 
 (国立天文台)
(特定非営利活動法人 日本スペースガード協会 理事長
何も無くて豊かな島の暮らし ―「南の知恵」を「北の文明」に−
崎山克彦 (作家)
ヒトの設計図:ゲノムの謎解き 
清水信義 (慶應義塾大学医学部分子生物学教授)

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耳鼻咽喉科疾患のリハビリテーション
   (司会のことば)
司会 山崎芳樹(高知県耳鼻咽喉科医会会長)
加島健司(徳島赤十字病院 耳鼻咽喉科部長

 顔面神経麻痺のリハビリテーションー顔面神経麻痺で高度の神経変性をきたした場合には各種の後遺症が生じてきます。後遺症のうち最も患者を悩ませるのが病的共同運動です。病的共同運動は、通常麻痺の回復後に遅れて生じてくることが多いのが特長です。麻痺後6カ月して麻痺が治癒したと判断しても、1年後に診察すると高度の共同運動を発症していることが少なくありません。病的共同運動は一度発症すると、その治療は困難であり、患者は一生不快な症状に悩まされることでしょう。徳島大学耳鼻咽喉科教室の中村克彦助教授は、病的共同運動の予防という点に注目し、鏡を用いたバイオフィードバック療法を開発し、著明な予防効果が得られることを報告されています。簡便な方法なので開業医の先生方にもすぐに行なっていただけると思います。
 めまいのリハビリテーションーめまいの診療において、慢性のめまいを訴える場合は、薬物療法の効果も限られていることが多く、その治療にはご苦労なされていると思います。その場合、中枢の代償機能により、めまいの回復を促進する方法、すなわち平衡訓練が最も有効です。岐阜大学耳鼻咽喉科教室では、ずっとめまいを教室の研究の柱としており、平衡訓練にも精力的に取り組まれております。そこで、岐阜大学耳鼻咽喉科教室水田啓介助教授より、症例に応じた平衡訓練の具体的方法を、代表例を提示しながらわかりやすく説明していただきます
顔面神経麻痺のリハビリテーション
(病的共同運動の予防
中村克彦(徳島大学耳鼻咽喉科学教室助教授)

 顔面神経麻痺の発症後2週間を過ぎると、神経の変性は完成し、その後は回復期に入る。Bell麻痺やHunt症候群の場合、神経の再生力は旺盛で、高度な神経変性をきたした症例でも発症後6カ月もすればかなりの運動回復が得られる。しかしながら、高度の神経変性に陥った場合、病的共同運動の出現は避けられず、患者は不快な症状にすっと悩まされることになる。病的共同運動のうち、口運動時の眼裂狭小は患者が最も不快と感じる症状である。そこで、演者らは、病的共同運動(口運動時の眼裂狭小)の発症を予防する目的で、バイオフィードバックを用いた訓練療法を考案した。
 訓練方法は、鏡を見ながら(視覚フィードバック)眼裂の狭小をきたさないように集中しながら、口運動(ウーと唇とがらし、イーと歯を見せる、プーと風船を膨らませる)の訓練を繰り返し行う方法である。注意点として、やみくもな顔面運動訓練、電気刺激、高周波マッサージ等は病的共同運動を増悪させる可能性が高いので禁止する。
 訓練の開始時期は表情筋にわずかな運動回復が見られた時点とし、自宅で毎日、朝15分、夕15分間, 10ヶ月間に及ぶ訓練を行わせる。
 我々は本訓練方法の有効性を確認する目的で、ENoG=0%の完全脱神経をきたした症例を対象として、訓練を行った群と行わなかった群で、口運動時の眼裂狭小の程度を比較した。その結果、訓練を行った群で後遺症の出現が著明に抑制されることを証明した。
 本法は、特別な機器を必要としない簡便かつ有効な方法であり、患者はいつでもどこでも訓練が可能である。神経変性が高度(ENoG=20%以下)の症例は、将来病的共同運動を発症する可能性が高いので、本訓練方法の良い適応である。患者に将来起こりうる症状と訓練の必要性を十分に理解させ、訓練に対するモチベーションを高めてやることが良い結果を得る秘訣である。

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めまい・平衡障害に対する平衡訓練 水田啓介(岐阜大学医学部耳鼻咽喉科学教室助教授)

 慢性めまいを訴える症例の治療に苦労することが多い。めまい患者の治療では機能障害に対しては薬物療法が一般に行われる。しかし、自覚症状や平衡障害が長く続く例に対しては平衡訓練を中心としたリハビリテーションが必要である。めまい・平衡患者においては日常生活動作における能力低下が生じており、この能力低下を改善するためには平衡訓練が有効である。
 機能障害の把握には、聴力検査や平衡機能検査、神経検査を行う。能力低下の把握には日常生活動作の支障度を捉え、その評価のための平衡機能検査を行う。
 具体的に平衡訓練対象となる疾患は、一時的に障害をもたらすが治癒する可能性のあるものや永久的な障害をもつため障害が固定しているもの、障害が進行するもの、すべてである。例えば一側高度迷路機能低下例では平衡訓練により代償による回復を促進することが目的となり、両側迷路機能低下例では回復の程度を高めることが目的となる。
 平衡訓練の実際は患者の日常生活の支障度を問診および実際の動作から、めまい・平衡障害調査表を用いて評価する。次に能力低下のための平衡機能検査を行い、他覚的に能力低下を把握する。患者毎に訓練項目を決めて指導する。方法は1回15分〜30分を1日3回、自宅で訓練させる。簡単な項目から始めさせ、疲れたり悪化させないように注意する。2週間に1度来院させ評価する。
 訓練のやり方を実際に具体的に述べ、代表例を提示する。

耳鼻咽喉科領域の遺伝疾患と遺伝相談
   (司会のことば)
司会 藤沢成人(香川県耳鼻咽喉科医会会長)
幸田純治 (阿南市)
 
 近年、遺伝子解析を主とした分子遺伝学の研究は日々めざましく進歩してきています。これにともない遺伝性疾患への関心が急速に高まってきており、私たち耳鼻咽喉科医にも遺伝相談に対する知識が求められるようになってきています。遺伝相談とは、単に疾患に対する遺伝的な説明を行うだけでなく、結婚や出産、職業選択などの問題に対するカウンセリングも含まれています。もちろん、遺伝情報を知ることによる患者さんの心的ショックに対するケアーも遺伝相談の重要な任務です。今回は耳鼻咽喉科領域の遺伝性疾患と遺伝相談について、これらに造詣の深い3名の先生をお招きしてシンポジウムを企画しました。(1)福島先
生には難聴性難聴について、(2)東先生には口唇口蓋裂の遺伝相談について、(3)伊藤先生には遺伝相談室の実際について講演を頂く予定です。
 遺伝性疾患について悩みや心配を持つ患者およびその家族が耳鼻咽喉科を受診した際に、的確な情報提供を行い、必要ならば遺伝相談を行っている施設を紹介するために役立てればと思います。

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徳島大学医学部附属病院遺伝相談室の実際と問題点 伊藤道徳(徳島大学医学部小児科助教授・同附属病院遺伝相談室 )

 はじめに 近年の分子遺伝学研究の進歩により,遺伝医学の成果は成人期発症の神経疾患,家族性腫瘍や糖尿病や高血圧などのいわゆる生活習慣病の遺伝素因の解明にまでおよんでいる。このような状況において,多くの遺伝に関する情報がマスメディアを通じて流れてきているが,これらの情報は必ずしも正しい知見や倫理的視点に基づいているわけではなく,一般の人がこれを判別することは困難であり,遺伝に対する誤った理解がなされたり,理解が不十分なまま遺伝子検査を承諾するといった問題が引き起こされている。こうした状況を受け,平成11年度から厚生省による遺伝相談モデル事業が開始され,徳島県において徳島大学医学部附属病院に遺伝相談室が開設された。ここでは,徳島大学医学部附属病院遺伝相談室における現状と問題点について述べてみたい。
 徳島大学医学部附属病院遺伝相談室の実際 徳島大学医学部附属病院遺伝相談室は,平成11年10月に遺伝相談モデル事業の一環として開設された。遺伝相談室のスタッフは現在,基礎医学系医師,臨床医学系医師,看護師,心理療法士など計20名から構成されており,遺伝相談は週4日,医師と看護師の2人体制で,原則として電話による予約制で行っている。また,月2回スタッフカンファレンスを行い,症例検討を実施しているが,これは遺伝相談の流れの中で重要な役割をはたしている。遺伝相談を実施するにあたっては,遺伝医学に対する専門的知識や最新の情報が必要不可欠であり,このためスタッフのレベルアップを目的とした勉強会も定期的に行っている。遺伝相談室開設以来,これまでに134例の相談を実施してきたがその対象疾患は,非常に多岐にわたっており,いわゆる先天性の遺伝性疾患から精神分裂病やアトピ−性疾患など遺伝素因はあるもののその遺伝性はまだ十分に解明されていない疾患も多く含まれている。遺伝相談において最も重要なことは,相談者の「自己決定権」であり,相談者の決定に対して強制的になることがないよう,あくまで対等の立場でともに考えていくようにしている。
 今後の問題点 第一には,遺伝相談は現在のところ保険診療として認められておらず,これまではモデル事業として実施されてきたが,平成13年度でこの事業が終了し,今後の相談室の運営にかかわる費用等が問題となっている。スタッフのモティベ−ションの維持,人員確保といった意味からも医療としての認知が早急になされることが望まれる。第二に,専門スタッフの養成が急務である。日本人類遺伝学会には臨床遺伝学認定医という資格があるが,その他の職種においても専門のカウンセラ−,専門の看護師等の資格が設置されチ−ム医療としての機能が充実していくことが望まれる。第三に,遺伝に対する偏った見方,誤解が存在するが,このような誤った認識を是正し,正しい知識の普及に努めて行く必要がある。 
遺伝性難聴と遺伝カウンセリング 福島邦博(岡山大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉・頭頚部外科助手)

言語習得期前難聴は、約1000人の新生児につき一人の割合で発生するという非常に頻度の高い先天異常の一つである。各種の原因がこの発生に関与すると言われているが、その中でも遺伝子異常に起因するものは全体の約半数を占めると推定されている。遺伝子異常による難聴のうちでは、常染色体劣性によるものが最も頻度が高く、また臨床像では難聴の他に特徴的な異常を来さない、いわゆる非症候群性難聴が大多数を占めることが知られている。
難聴の原因遺伝子の種類については諸説あるが、多種類の異なる遺伝子異常が言語習得期前難聴の発症に関わっていることは定説となっている。その中でも最も頻度の高いものはコネキシン26(ギャップ結合β2蛋白:GJB2)の異常によるもので、言語習得期前難聴のおよそ30%程度を占めると推定される。コネキシン26で頻度の高い遺伝子異常は、人種によって異なることが知られているが、興味深いことにいずれの人種でも2%程度での保因者(ヘテロ接合体)が存在している。日本人の場合、GJB2遺伝子のmRNAで233番目から235番目まで3つ続くシトシン(C)のうち一つが欠失する235delCと呼ばれる遺伝子異常の頻度が高いことが知られているが、この遺伝子異常は東アジアで広範に認められ、創始者効果であることが推定されている。このGJB2以外にも、言語習得期前難聴患者からは近年多数の遺伝子異常が報告されており、今後もこうした知見が多数報告されてくるものと期待される。さて、近親者での難聴の既往は、新生児期から存在する難聴の最も典型的なリスクファクターである。経験的には、第一子が難聴であった場合、第二子に難聴が発生する可能性はおよそ10%と報告されている。また、両親ともに高度難聴のカップルの場合、その最初の子供が難聴となる確率もおよそ10%程度と報告されている。難聴の遺伝カウンセリングは、現在もこうした経験的な難聴発生の可能性についての計算が主であったが、遺伝子診断が現実のものとなれば、こうしたカウンセリングにとってより正確な確率が提供される可能性がある。逆に、外注などで比較的容易に遺伝子診断が可能となってきた現在、診断の内容と意義をきちんと患者に向かい合いながら説明する遺伝カウンセリングの技術は、遺伝子診断の前に最低限必要な知識であるといえる。実際のカウンセリングでは、しばしば「難聴」についての十分な理解と障害の受け入れがまず要求されることも多く、「難聴カウンセリング」が最初のステップとして必要なことも多い。特に、乳幼児の難聴を対象とする場合には、難聴が見つかった際の対応や療育手段についても熟知した上で結果を説明する必要があることが多く、小児難聴に経験の深い耳鼻咽喉科医が実際のカウンセリングを行う意義はきわめて高いと言える。

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口唇口蓋裂の遺伝相談 東 紘一郎(藤原記念病院 耳鼻咽喉科部長)

 耳鼻咽喉科における遺伝相談は、難聴が主たる対象となる。それに対して、口唇裂および口蓋裂は、形成外科や口腔外科などで扱われる例が多いとはいえ耳鼻咽喉科医が相談を受ける機会も少なくはないと思われる。
 口唇口蓋裂の遺伝について、合意は得られていない。初期には、多因子遺伝しきい値モデルが提唱された。その後、常染色体上の、浸透度の低い優勢あるいは劣性の主遺伝子モデルや、さらに優勢の主遺伝子と、少なくとも一つ変更遺伝子を想定する二座位モデルなどが唱えられてきた。口蓋裂単独のものは劣性の単一主遺伝子モデルに合致するとも言われている。結局、現在のところ口唇口蓋裂に対して確定した遺伝モデルがないために、遺伝相談においては経験的危険率が用いられる。
 診断上、注意すべき点は、問題となる症例が、口唇口蓋裂を伴いうる既知の症候群かどうかを確実にすることである。数パーセントから30パーセントが症候性のものだと言われている。口唇裂ないし口蓋裂を伴う150程度のメンデル遺伝の症候群が知られており、その50パーセントが常染色体劣性、40パーセントが常染色体優性、10パーセントが伴性遺伝だとされている。その他に染色体異常や胎児毒性を持つ物質によって惹き起こされる症候群、原因のいまだ知られていない症候群などを鑑別しなければならない。症候群性のものであると診断されれば、より正確な再発危険率や、出生前診断などが可能になる場合が少なくない。
 いろいろな奇型のうちでも口唇口蓋裂のような顔面の奇形では親の精神的な打撃は大きいものである。それに対して奇形の成因、および予後、治療などについて理解させることは親の困惑を緩和することになる。写真などによって治療前と治療後の状態を見せることも有効であろう。
 難聴および口唇口蓋裂以外の、耳鼻咽喉科領域の遺伝性疾患は嗅覚障害やオスラ−病などがある。時間があればこれらの疾患に関しても検討する。
初歩から学ぶ補聴器講習(司会のことば) 平賀智 (健康保険 鳴門病院 耳鼻咽喉科部長)

1)補聴器の適合について 特に不適合なケース       和田好純(麻植郡)
2)補聴器の値段について                     東信実業KK
3) ハーフゲインを中心としたフィッティングについて        増田博範(屋島総合病院耳鼻咽喉科部長)
4)補聴器の故障の原因について                四国補聴器センター

以上各項目について10分程度の説明をします。
実習としては以下のことを予定しています。
@ 音場での聴力検査、ワーブルトーンならびに言葉の聞き取り検査。
A 補聴器の特性の測定
B イヤーモールドの作成

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小児言語障害の見方(司会のことば) 司会 宇高ニ良(名西郡)

 我々耳鼻咽喉科医は一般外来診療や学校健診において、言語発達障害や構音障害など言語障害を持つ小児をしばしば経験する。しかしながら、最近までの医学教育において言語障害分野の教育が系統だって行われたとは言い難く、単に音声言語の生成器官として耳、鼻、咽喉頭を診察することはあっても、言語全般にわたる知識が必要な小児言語障害は、多くの耳鼻咽喉科医にとって、もっとも苦手とする疾病の一つである。
 今回は、一般の耳鼻咽喉科医が外来診療において可能なスクリーニングとしての小児言語障害の見方について、講演頂きたいと考えている。
小児言語障害の見方 笠井新一郎(九州保険福祉大学保健科学部言語療法学科教授)

 小児の言語障害は高次脳機能障害・失語症や運動障害性構音障害など成人に見られる言語障害とはまた別の大きな問題を含んでいる。すなわち言語にはコミュニケ−ションとしての外言語と思考過程としての内言語の意味合いがあるが、発達途上にある小児において言語障害とは、コミュニケーションの障害であるばかりでなく、思考過程の問題を示すことが多い。この言語障害を早期に発見し、適切な治療指針を示すことは、小児の健全な発達を促すために、耳鼻咽喉科の先生方に託された使命のひとつと考える。
 今回は小児の言語障害の内でも、とくに言語発達障害と構音障害を取り上げ、一般外来診療でのスクリーニング方法について実習を含め、お話ししたい。言語発達障害を考えるうえでポイントは言語の表出ばかりでなく、理解の2面から検討する必要があること、言語発達障害の原因には種々のものがあるが、治療方針を立てるためにもまず原因の究明が必要であること、さらに原因によって治療、訓練が必要かどうかの見極めである。そのために、まず「ことばのテスト絵本」を用いた言語の理解、表出を見るとともに、言語発達に関するその他の発達についても、スクリーニングできる方法について実習する。また、そのスクリーニングの中で構音障害についてもチェックできる方法を説明する予定である
職員のための聴力検査実習(司会のことば) 司会 雫 俊一(徳島市)

          講師 上田健二(徳島市)
          講師 阿部律子(鴨島共同病院耳鼻咽喉科部長)
 職員の方々を対象とした、聴力検査の実習を行います。聴力検査に関しては、日本聴覚医学会では準備、被験者への指示,検査の実施は有資格者をもって行なうものとする、との見解が示されております。そして有資格者とは聴覚測定の理論と実践のしかるべき教育課程を経たもの、とされております。内容は標準純音聴力検査の理論と方法、マスキングおよび語音聴力検査の講義及び実習を行ないます。また実習終了後には受講証を発行いたします。

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旅行医学(司会のことば) 司会 鈴木徹(日本耳鼻咽喉科医会 理事)
高石司(徳島市民病院 耳鼻咽喉科部長徳島大学医学部耳鼻咽喉科臨床教授)

 航空機の長旅のあと空港についたとたん、突然胸が苦しくなり、そのまま死に至ること もある「エコノミークラス・シンドローム」。最近マスコミで取り上げられ話題になりました。
 日本人の海外旅行者は年間2000万人にも達しようとしています。以前は海外旅行、滞在は一部の限られた人のものであり、そこでの健康問題が生じても身近な問題とは考えにくい傾向がありました。老若男女、様々な疾患を持った人が旅行する時代になりました。このような状況の中、旅行後、何らかの症状を訴える旅行者が一般の医療機関を受診することも多くなってくると想像されます。私たち耳鼻科医も自分自身の問題として旅行に関する医学を知る必要があると思われます。このフォーラムでは航空機内でどのような病気が発生し、どのような対策がとられているか、また、海外ではどのような感染症にみまわれ、どのような対策をとる必要があるのかについてお話いただきます.
旅行医学と旅行者感染症 濱田篤郎(労働福祉事業団 海外勤務健康管理センター研修交流部長)

 現代の海外旅行の発祥は、19世紀中頃にイギリスのトーマス・クックが、ロンドンからパリ万国博覧会への団体旅行を企画した時点にさかのぼる。それから100年以上が経過し、航空機旅行の普及とともに、海外旅行は手軽な娯楽へと変身した。1990年には全世界で4億人以上の人々が海外旅行を楽しむ時代となっている。
 このような海外旅行者の健康問題を扱う学問が旅行医学(Travel Medicine)である。欧米諸国では既に50年近い歴史のある学問で、国内にはその専門医療機関である旅行者外来(Travel clinic)が数多く開設されている。ところが日本では、旅行者数が1700万人を越えているにもかかわらず、医療関係者の間に旅行医学が未だ浸透しておらず、また旅行者外来もほとんど存在しないのが現状である。
 旅行医学が対象とする疾病のうちでも、感染症の占める割合は大きい。とくに途上国に滞在する旅行者は、常に感染症のリスクに晒されている。このうちでも、経口感染症とりわけ感染性腸炎は最も頻繁にみられる。先進国の住民が途上国滞在中に発症する下痢を旅行者下痢症と呼ぶ。感染性腸炎がその大部分を占めるが、1カ月間途上国に滞在した旅行者の約30%が本症を発症すると推定されている。また海鮮料理などから感染するA型肝炎も、頻度の高い感染症である。これらの経口感染症を予防する基本は飲食物への注意であるが、A型肝炎に関してはワクチン接種も推奨されている。
 デング熱やマラリアなど蚊に媒介される感染症も、滞在地域によっては感染の危険性がある。とくに近年は東南アジアの都市部でデング熱の爆発的な流行がみられ、日本人旅行者の感染例が頻繁に報告されている。マラリアは赤道アフリカで依然として感染リスクが高く、サファリツアーなどの際に感染する事例が多くみられる。このようにリスクのある地域に滞在する際は、防蚊対策を忘れてはならない。さらに、昨年末にはマラリアの予防薬(メフロキン)が認可され、医師からの処方が可能になった。
 性行為で感染する梅毒やB型肝炎なども、現地での行動パターンによりリスクが高くなる。東南アジアや南アジア諸国では、最近になりHIV感染者も急増しており、安全な性交渉を旅行者に教育する必要がありそうだ。
 感染症以外にも、航空機内で発生する健康障害や慢性疾患の悪化など、海外旅行中に注意を要する健康問題は少なからず存在する。この種の疾病を予防し、健康的な海外旅行を旅行者に体験していただくことが、旅行医学の使命なのである。一般臨床医の方々も旅行医学の知識を活用し、健康な海外旅行を処方していただきたい。

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航空機内の医療 飛鳥田一朗(日本航空株式会社健康管理室)
 航空機内の医療は航空医学の1分野である.航空医学は航空なくしては存在しない.そのため、 航空医学を知るためには、有史以前から存在した医療や医学が、航空にいかに関わってきたかを見る必要がある.
人類が大空に飛翔したのは、1903年12月17日飛行機を発明し初飛行に成功したライト兄弟が最初ではない.そのはるか以前、1783年にピラートル・デ・ロジエとマルキド・アルランデスが気球で大空を羽ばたいている.ヒトが大空を飛行することで医学は航空に係わることとなった.
 1848年、リリエンタールがグライダー(滑空式固定翼機)による飛行に成功した後、1903年12月17日10時35分、ライト兄弟は動力式滑空固定翼機、 今日言ういわゆる飛行機の初飛行に成功した.
 現在、航空は安全であることが第一義であるが、航空の安全はすべての科学によって支えられている.そこで私は航空医学を「航空の安全を支えるすべての科学のなかの医学領域」と定義したい.航空医学の研究領域は基礎医学、臨床医学、社会医学ときわめて幅広い領域を現在では守備している.すなわち、乗員の選抜と健康管理(医学適性基準、航空身体検査証明)、基礎医学的研究 (航空環境、航空生理、人間工学)、産業医学 (航空会社従業員の健康管理、特殊環境下における安全衛生)、旅行医学(輸入感染症、航空機旅行の健康適性)、エアーレスキュー(ヘリコプターなどによる医療搬送、機内救急医療)などである.
ボーイング社によると、 1960年代から民間航空における100万離陸回数あたりの全損事故率は著しく減少、直近の20数年は100万離陸回数あたりの事故率は2回以上にもならないものの1回以下にもなっていない.離陸回数は世界的に増加傾向にあり、 絶対事故数は増加している.事故数の増加と機材の大型化と相俟って、 航空事故における犠牲者数は決して減少しているとは言えない.これらの事故を詳細に分析してみると、 高度な技術革新とそれを操縦する乗員とのインターフェースでの問題が指摘されている.今後事故率を1回以下にする目標を設定すると、乗員の健康管理の充実に加え、航空における人間工学的研究の成果が期待されている.他方、医学が係わる事故やインシデントは現在でも皆無とはいえない.
 航空や医学は今後も大きく進歩・進展することは間違いない.この航空と医学のそれぞれの進歩をお互いの関数として、 今後も安全を担保していくことが航空医学の大切な使命であることを強調し、航空機内の環境と急病人発生の現状と対策を概説したい.

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私の診療上の工夫(司会のことば) 司会 川田育二(阿南協栄病院 耳鼻咽喉科部長)
松浦健次郎(小松島市)

 近年の医療を取り巻く環境の変化は著しいものが見られます。診療にも治療にも次々に新しい技術・機器・材料等が開発されている。然も、それらは日常診療の中にたちまちのうちに取り入れられてきています。このような大きく、素早い変革の流れの中にあって、私達、第一線の現場にある臨床家に取りましても、絶えず、これらの新しい変革を素早く取り入れなければならないのが使命かと思われます。しかしながら、このような先端医療のみを目指すのも重要でありますが、日常診療の中で実際にこれをどの様に生かしていくか、また従来の診療の中にも無駄を省き、今に相応しいより、効率的にすること等、チョットした工夫等
が私達が日頃求めているものではないでしょうか。
 この様なことが、今回このテーマを取り上げた理由であります。また、この耳鼻咽喉科医会フォーラムに最も相応しいテーマの一つと考えますし、今後も継承して戴けたらと思えるほどです。そのなかにあって、今回は、より臨床的でしかも、より容易に取りいれることが出来る工夫を主として取り上げてみました。
これを機会に、これからの診療が、より高い精度で、より正確に、より簡便に、より快適に、そしてより楽しいものになればと期待いたします。
めまい問診による内耳性障害、中枢性障害の鑑別について 小野忠彦(さいたま市)

 めまい診療において、発症部位の特定、特に内耳性病変、脳内病変の鑑別は重要である。これに対し高度の器械を駆使することが必要であるが、一部の先生を除いて耳鼻科診療所では、そのようなことは望めない。とすると、検査以前に問診による鑑別が重要となる。多忙な耳鼻科医にとって、問診によって簡単に局在診断できることを提案する。
日常診療で簡単に出来る細菌薬剤感受性検査 道下 秀雄(東京都)

 耳鼻咽喉科領域の感染症の中で急性中耳炎、急性副鼻腔炎の起炎菌として重要なのは、肺炎球菌,インフルエンザ菌、モラクセラカタラーリスおよび黄色ぶどう球菌などである。慢性中耳炎,慢性副鼻腔炎では肺炎球菌、黄色ぶどう球菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、プロテウス属などが問題となる。また、咽喉頭炎、扁桃炎では化膿レンサ球菌、肺炎球菌などのレンサ球菌属が重要である。
投薬にあったっては菌種の決定、細菌薬剤感受性検査の結果投薬するのが原則であるが、不可能な場合は上記の起炎菌を考慮して投薬することが多いが経過に不安を感じることも多い。
 細菌薬剤感受性検査を外注しても結果が出るまでに1週間はかかる。そこで自家で直接細菌薬剤感受性検査を行なうと翌日には有効薬剤を判定することが出来る。私は30年間この方法を行なって参りましたので、治療(投薬)にさほど不安を感じることはありません。
 検査に必要な器具とその方法をご紹介し、その実際をビデオで供覧いたします。
内視鏡を大いに活用しよう 小澤 仁(甲府市)

 耳鼻咽喉科外来診療では、中耳、鼻腔、咽喉頭など深部の狭小な体腔を取り扱うため、これらの領域の疾患を扱う際には、額帯鏡や特殊な診療器具を必要としてきた。さらに、熟練した耳鼻咽喉科医は加齢による視力や調節力の低下という視器の生理現象の中で、いかに正確で精度の高い診療を維持していくかが大きな課題となる。本セッションでは、患者に負担をかけず、安全で衛生的、かつ効果的な内視鏡下の診療についてご披露したい。 外来診療では、硬性内視鏡と撓性内視鏡の長所を上手に生かしながら両者を使用する。硬性内視鏡は、外径が1.7mm、2.7mm、4.0mm、視野方向が0°、30°、70°、110°のものを、撓性内視鏡は、有効長が300mmの外径2.4mmと3.4mmのものを使用している。額帯鏡は使用せず、代わりにヘッドライトを使用する。内視鏡が常時即座に使えるような診察室の環境作りが重要である。すなわち,診察室の机の上には、数本の硬性内視鏡を自作スコープウオーマーによって防曇対策を施してある内視鏡トレイ内に配備し,内視鏡を使用する度に自動的に光源装置が作動するような工夫をしている。
 鼓膜、中鼻道〜嗅裂部、上咽頭、喉頭の各所見は,全例内視鏡下にとる。さらに、上顎洞穿刺洗浄、鼻出血止血処置、咽頭喉頭異物除去術、鼻茸切除術、高周波電気凝固術、レーザー手術などの処置や手術は、内視鏡下の良い対象となる。
内視鏡診療に適した診療器具類や、画像記録装置などを同時に活用することが、内視鏡の有用性を一層高める。
 今日、耳鼻咽喉科診療において内視鏡の貢献度は計り知れない。ただ,内視鏡は非常に高価であり、保険診療では内視鏡検査が高点数に設定されているという制約のため、日常診療に頻繁に活用されているとは言い難い。したがって、このような障碍が克服され、内視鏡が大いに活用されることを切に願っている。

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耳鼻咽喉科疾患の診断と治療
――忘れてはならない耳鼻咽喉科所見の観察――
江崎史朗(大森赤十字病院 耳鼻咽喉科部長)

耳鼻咽喉科領域の疾患は、その多くが直接あるいは間接的に個々の病変部位で観察された所見を基に診断・治療が進められる。そのなかで最も観察が頻繁になる部位は鼻咽腔すなわち上咽頭と思われる。その理由は,上咽頭に発症する原疾患が少なく、これまでは後鼻鏡による倒立像の観察を短期間で行なうしか方法がなかったためと考える。しかし、今日では内視鏡が進歩し広く普及しており、ほとんどの診療施設で充分な観察が可能である。
では鼻咽腔でいかなる所見をみることが可能で診断・治療に役立つ所見となるのか。
従来は、上咽頭腫瘍やアデノイドの観察を中心に検索されてきた。ところが、このほか中耳炎の中耳貯留液や副鼻腔炎の後鼻漏の排液状況による病態の再検討や、上咽頭に白苔が付着する際は伝染性単核球症や結核が示唆されるなどの治療指針に重要な所見がある。
鼻咽腔所見の観察は、耳鼻咽喉科専門医にとって忘れてはならない情報源と考える。
喉頭を中心に、画像ファイリング・外来小手術の工夫 部坂 弘彦(東京都)

 当院では喉頭疾患の治療に関してフレキシブルファイバースコープを利用した処置を行なっている。オリンパス社製ファイバースコープENT T3 にストライカー社製CCDカメラを接続し、17インチモニター上に病変を拡大視して外来での日帰り手術を施行している。
 今回、魚骨異物、声帯ポリープ、声帯Cyst,喉頭蓋Cyst、などの手術についてVTRにて供覧する。また画像ファイリングシステムを導入したことによりデータベースを構築して動画像を保存でき、同一患者の経時列的検索も瞬時に行なわれる。さらに、正常像との比較も行なえるためインフォームドコンセントに大いに役立っている。そのシステムの概要についても説明する。
比較的安価にできる画像ファイリングシステムについて 石山英一(東京都)

 平成12年1月1日、日本医師会より「診療情報の提供に関する指針」の実施が医療機関に通達されました。この指針の基本理念とする所は、「患者が疾患の内容と診療の内容を充分に理解し、医療の担い手である医師と医療を受ける患者とが、相互に信頼関係を保ちながら、共同して疾病を克服することを目的」としている。
 日常の煩雑な耳鼻咽喉科外来で、この指針を実施する方法を考える場合、従来より施行している内視鏡画像診断を一歩進めて、動画,静止画のデジタルファイリングシステムを構築する事により、診療情報の提供への資料を構成できると考えられるが、最近某社より発売された画像ファイリングシステムは高価なので、自前のアップル社製コンピュータPOWER BOOK G3(400MHz)にデータベースソフトとしてファイルメーカープロを使用し、某社の協力を得てファイリングシステムソフト「DVキャビネット」を作成してもらい、市販の高価なシステムと略同様な効果を上げているので、これらを紹介したい。
 この方法は、画像の記録はもちろんであるが、患者自身の症状の説明には最も効果的である。ビデオ(VHS)で紹介予定(10分)。
快適で効果的な医院をめざして 宮武 宏(高松市)

 平成元年の秋、郷里の高松市で新築テナント形式でクリニックを始めました。
患者さんにとっては快適、かつ職員にとっては効率的な診療が出来るようにと私が考えた耳鼻咽喉科診療システムの現状についての報告です。
1. 多数の患者さんが来院された時に、いかにスムーズに受付け、診察,治療、会計,投薬をするか(自動受付け器、院内はワンウエイ、パソコン2台、院外処方)
2. 分かりやすい医療をする(3台のモニターテレビ、ビデオプリント,パンフレット)
3. 医者の事務的仕事を少なくして,患者さんと話す時間を多くするには
(パソコン2台の活用と事務職員との連携)
4. 機能的な診療と治療をするには(鼻汁吸引の試み、ワンタッチの切り替え)
5. 患者さんにとって快適な場所にする(待合室の椅子、本、トイレ、遊具、BGM)
6. 器械洗いなどの雑務をいかに少なくするか(食器洗い器、消毒液の外注)
7. 手洗い,タオル、滅菌は(電動巻き上げタオル、ジェットタオル、超酸化水)

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―歩進んだ補聴器講習(司会のことば) 司会 平賀 智(健康保険鳴門病院 耳鼻咽喉科部長)

1) アナログ補聴器とデジタル補聴器の違いについて            
       四国補聴器センター
2) 不快レベル、快適レベルについて
                  増田博範 (屋島総合病院耳鼻咽喉科部長)
3) 騒音処理のメカニズムについて
                東信実業KK
4) 言葉の明瞭度について ハーフゲインを超えるフィティングは可能か?
                     平賀智(健康保険鳴門病院 耳鼻咽喉科部長)
                                         
以上の各項目につき説明をいたします。
 実習としては、デジタル補聴器のフィティングを中心とした実習を行ないます。難聴のモデルを作成し、実際にフィティングを行なえるよう企画する予定です。前半で行なった実習内容も行なえるようにします。何でも相談コーナーを設け可能な範囲で対応できるようにしますのでお気軽にご参加お願いいたします。
超音波断層検査(司会のことば) 司会 記本 晃治(徳島大学耳鼻咽喉科教室 講師)
谷口雅彦(板野郡)

超音波断層法は、超音波を発射し対象物から反射して返ってきた信号を捕捉して、対象物の位置・形・性質を知ろうとする検査法です。近年の高分解能超音波装置の開発、低流速感度の上昇したカラードプラ装置の進歩に伴い、耳鼻咽喉科領域のみならず、さまざまな領域で発展が著しい検査法です。
超音波断層検査は、患者に苦痛を与えない検査であり、X線被爆がなく、検査費用も安く、微小病変の描出に優れ、簡便に施行できる等の特徴があります。耳鼻咽喉科領域においては、甲状腺・唾液腺・リンパ節の検査に用いられることが多く、特に、甲状腺疾患においては、必要不可欠な検査であり、穿刺吸引細胞診をあわせると、かなりの頻度で質的診断も可能となります。
今回は、その有用性が高いと思われる甲状腺疾患を中心に、実例を提示説明した後に、超音波断層機器の取扱いについて実習して頂きます。

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頭頸部における超音波検査 川淵 崇 (徳島県立中央病院 耳鼻咽喉科)

 頭頸部領域における超音波検査は、近年多くの病院施設で行われるようになり、その有用性が認められてきています。
 超音波検査は他の画像診断にはない多くの特徴をもち、被検者及び検者のどちらにもストレスのかからない有用で手軽な検査法です。
 その特徴について説明します。
  特徴
1) 検者に与える侵襲(被爆など)がまったくといってよいほどない
2) 装置が他の診断装置に比べ、軽量、小型でかつ安価である
3) 操作が簡便で、介助者を必要としない
4) 軟部組織の分解能に優れる
5) リアルタイムの表示が可能である
6) 外来やベッドサイドで簡単に比較的短時間に施行できる
7) 皮膚または粘膜表面と直交する面内であれば、任意の断層像を得ることができる
 なお、その特徴から、超音波検査は、外来診療と同時並列的に、医師自らが実施して、静的画像、動的画像から情報を収集することが重要です。さらに正確な部位から明視下に超音波ガイド下生検を行い、細胞診ないしは組織診を実施することも可能です。
  頭頸部の各部位に見られる代表的な疾患について以下に、簡単に紹介します。
 甲状腺は、頭頸部の中で最も超音波検査が、有用な臓器です。その超音波所見について簡単に説明します
・単純性甲状腺腫:甲状腺の軽度腫大がみられ、内部エコーは均一である。
・バセドウ病:甲状腺左葉右葉及び峡部のびまん性腫大がみられ、エコーレベルは低いことが多く、内部は比較的均一である。
・慢性甲状腺炎:甲状腺全体がびまん性に腫大し、エコーレベルは一般的に低く、表面やや不整である。
・亜急性甲状腺炎:甲状腺内部に不整形、境界不明瞭な低エコー像が認められ、その部位に一致して圧痛を伴う。
・甲状腺嚢胞:境界明瞭、辺縁平滑、後方エコーの増強を伴った円形の像内部エコーは認められないか、嚢胞変性を伴った場合は内部に点状高エコーもしくは充実性の像を伴うことも多い。
・濾胞腺腫:円形で多くは辺縁低エコー帯を伴う境界明瞭、表面平滑な結節、内部エコーは均一なものが多い。
・腺腫様甲状腺腫:多発性の結節性病変、境界不明瞭、嚢胞成分が多く 見られ、石灰化を伴うことも多い。微少癌を 合併することがある。
・甲状腺癌:乳頭癌が最も多く、その超音波像は、内部エコー不均一な 低エコー像を示し、形状は不整、砂状または粗大な石灰化を伴うことが多い。

 耳下腺でみられる超音波所見の代表例について説明します。 
 ・ムンプス:びまん性の耳下腺腫大がみられ、エコーレベルの軽度低下を認める。
 ・化膿性耳下腺炎:腫大した耳下腺内に低エコー領域の散在がみられる。
 ・良性腫瘍:一般に形態が整で、境界明瞭、規則的、表面平滑で内部エコーは繊細、均一、低エコーで、底面エコーが明瞭  そして後部エコーは増強し、多くは側方減弱を伴う。
 ・悪性腫瘍:形態が不整で、境界が不明瞭、内部エコーが不均一  後方エコーは等エコーあるいは減弱、側方減弱は 認められない。
 
顎下腺でみられる超音波所見の代表例について説明します。
 ・顎下腺炎:びまん性の顎下腺腫大がみられ、エコーレベルの低下を認める。
 ・唾石症:炎症に伴い顎下腺は腫大していることが多く、唾石は音響陰影(アコースティックシャドウ)を伴った石灰化(strong echo)として認められる、また腺管の拡張を認めることもある。
・良性腫瘍:耳下腺に準ずる。
・悪性腫瘍:耳下腺に準ずる。
 その他、頭頸部の超音波検査は、頚部リンパ節の炎症、リンパ腫、リンパ節転移などをはじめ、正中頸嚢胞、側頸部嚢胞、神経鞘腫、副甲状腺疾患などにおいて、有用な検査です。

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診療所における接遇(司会のことば) 司会 西条秀明(板野郡)

 職員を対象にして接遇の基本及び実際に診療所の外来で行なわれている医療サービスについて講演していただきます。講師の菅真紀子氏はホスピタリティーアドバイザーとして数多くの経験を積まれており職員の意識改革がはかれるものと期待しております。
診療所における接遇 菅真紀子氏(ホスピタリティーアドバイザー)

 医療を取り巻く環境は年々厳しくなっており医療機関も患者様に選んでいただく時代になりました。医療技術の向上もさることながらますます患者サービスの必要性が重要視されてきております。競合する医療機関の増加により他医院との差別化や患者サービスに力を入れる所も増えてきており、患者様自身のサービスに対する意識も向上してきました。
こうした状況での接遇のあり方はどうあるべきでしょう。接遇は「あいさつ」が基本です。
 来院された患者様にはいつも笑顔で接することが大切です。現在では殆どでオープンカウンターとなっておりスタッフの受付での対応は特に大切です。又検査に際しても患者様に事前に十分説明し不安感を解消しておくことを忘れてはなりません。院内の掲示の仕方や患者様の負担を軽減する工夫も必要となってきます。
本日は実際の医療現場で行なわれている接遇やその他の様々の工夫を実例を提示しながら紹介させていただきます。

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人類の誕生と未来を考える条件 
――天文学の立場から―
(国立天文台、
特定非営利活動法人 日本スペースガード協会 理事長)

私達人類は、確かにこの地球上にいます。そのような存在をもたらした条件はどのようなものでしょうか。天文学の立場から少し考えてみます。
 その条件は大きく分けて3つあります。
1) 人類ばかりでなく、宇宙全体の物質を入れる空間が作られねばならない。
2) 生物や物体を形成するための材料(原子)が作り出されなければならない。
3) 材料を頃合よく混ぜ,変化させ,しかもその変化スピードを早くしなければならない。
 これらの条件を満足させる鍵を握っているのは全て天体現象と関係しているのです。最新の宇宙理論では、宇宙はビッグ・バンの大爆発によって、時空(時間と空間)が作り出されたのです。ハッブルの法則から導かれる関係から約150億年前に、文字通り無の世界から時空が出現したのです。
 形成されたばかりの宇宙には、陽子とか電子などの素粒子しかありませんでした。生命に欠かせない炭素も酸素もなかったのです。宇宙の中で星が形成され、その中心部で原子核融合反応が起こります。そして,その過程の行き着く先で超新星爆発によって作られたばかりのいろいろな原子を宇宙空間にばらまく事により、生命の材料が供給されるのです。
 宇宙は広大です。原子は1立方メートルに1個位しかありません。生命に必要な複雑な分子を作り出すには多数の原子を狭い空間に集めなければなりません。それが地球のような惑星が必要なわけです。そして、水とエネルギーがあれば、一定時間後には簡単な生命が誕生するといわれています。しかし、そのような安定な環境では生物はなかなか進化しません。
ダーウィンの進化論のようでなく、突然変異によって進化を加速する環境変化(破壊)が必要なのです。地球はこの点においても格好の場所でした。6,500万年前には恐竜を絶滅に導いたような小惑星衝突が時々起こっているのです。
 私達人類は、その未来を考える時、どのように考えればよいのでしょう。未来のことはよくわからないかもしれません。しかし、人類が誕生してきた過去の歴史を見る事により、そのヒントが得られるのではないでしょうか。

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何も無くて豊かな島の暮らし
 ―「南の知恵」を「北の文明」に−
崎山克彦 (作家)

 出版社のサラリーマンとして30年近く、よく働きました。その間、アメリカで十年を過ごしました。五十二歳で仕事を辞め、フィリピン共和国セブ島とボホール島の中間にある「カオハガン島」と出会い、それから、もう十一年、その熱帯の小さな島で暮らしています。北緯十一度に位置し、広さは五万平米、東京ドームと同じ大きさの,小さな熱帯の島です。三百六十度を海に囲まれた小さな島の暮らしは、大きな自然にスッポリと包まれてしまった暮らしです。そして,そこに住む四百人の島民たちの暮らしは,ほとんど自給自足の、周りの自然に頼った暮らしです。
 そのような環境で自然と肌を接して暮らしていると、それを包んでいる大きな宇宙、自然には何か「善意の意思」があるのではないか、そして,それを創った「創造主の存在」を感じるようになっています。今では、はっきりと、そう感じています。その中での人間の存在のいかに小さいこと、そして同時に、進化の頂点にある人間の責任ということを感じるようになります。
 カオハガン島から日本を振り返ってみると、物質文明に溺れ、欲望を剥き出しにした暮らしが見えてきます。人間がその責任を果しているとは考えられないのです。それが、今の文明社会を歪であり、人間性そのものの破壊にも繋がっているように思うのです。「豊かさ,便利さ」を考え直すことの必要性を強く感じています。さて、カオハガン島にも、そんな、物質文明、貨幣経済の流れが、少しずつですが、押し寄せ始めています。初めから、それを否定するわけにはいかないし、否定するべきでもないでしょう。
 物質的にはまったく豊かでない、まったく便利でないこのカオハガン島の暮らしに、真の豊かさ,便利さがあるのではないかと、私は、ずっと、感じていました。我々が経験してきた物質文明への道をそのまま辿らせるのではなく、カオハガン島で培われてきた「南の知恵」を生かして、何か新しい暮らしのスタイルを創ってみたい。行き詰まった「北の文明」の答えになるような。それが、今の、私のロマンなのです。

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ヒトの設計図:ゲノムの謎解き 清水信義 (慶應義塾大学医学部分子生物学教授)

  ゲノム(Genome)とは遺伝学でいう遺伝子(Gene)と染色体(Chromosome)を組み合わせて作った造語であり、すべての生き物の設計図を意味する。従って、ヒトゲノムといえばヒトの生命の設計図のことである。ゲノムの化学的実体は、細胞の核に存在する染色体の本体・DNA(デオキシリボ核酸)である。実際に、ヒトの細胞の核には22対の染色体、すなわち1番から22番までの常染色体、とX・Yという性を決定する染色体が存在する。
これら24種類の染色体DNAの全塩基数がヒトゲノムの情報量であり、30億塩基(3000Mb)と算定されている。ヒトゲノム30億塩基の情報からおよそ3万2千種類の遺伝子が最近同定された。それぞれの遺伝子からは特異的なタンパク質がつくられ、それら蛋白質の生理作用によって生命の営みが支えられている。この膨大な情報を担った46本のDNA分子が、その塩基配列を微妙に変えながら親から子へと代々伝えられるのであり、まさにゲノムDNAの塩基配列を解読することによって生命の設計図の謎解きができ、ひいてはヒトという生物をより深く理解するために必須の基盤が与えられる。ヒトゲノム計画は、その目指すゴール「ヒトゲノムの完全解明」がライフサイエンスとしてあまりにも壮大であったためアポロ計画に喩えられ、1991年に国際協力で開始された。その10年後、1999年12月に、我々は最初の成果として、22番染色体の塩基配列決定を完了し、少なくとも545個の遺伝子を発見した(1)。次いで、2000年5月には21番染色体の解読も完了し、225個の遺伝子の存在を報告した(2)。さらに、2001年2月にはいわゆるドラフトシーケンスを大雑把に解読して、32,000個の遺伝子を含む「ヒトゲノム概要版」を公表した(3)。現在、2003年の春を完全解読の新たなゴールとして、ヒトゲノムの解析は急ピッチで進められている。
 これまで10年間のヒトゲノム解読の過程で、まさにゲノムテクノロジー(GT)というべきさまざまな新規技術や方法論が開発されている。それらは枚挙に暇はないが、GT革命の恩恵をうけて「ゲノム医科学」というべきライフサイエンスが生まれ育っており、それは医療の応用分野にも着実に浸透している。すでに病気の診断・治療・予防の方法に革命が起こりつつある。遺伝子の塩基配列に変化(突然変異)が起これば、タンパク質が全くできないかあるいは異常なタンパク質をつくるようになり、生理作用に狂いが生じてついには病気の原因となる。ところで、ヒトゲノムDNAの塩基配列は、基本的には人類共通であるがかなり個人差がある。特に1塩基が異なるタイプの個人差(SNP)は1,000塩基に1回くらいの高い頻度(0.1%)で検出される。SNPは各個人の薬剤感受性や罹病性の違いに関連しており、糖尿病、心疾患、喘息、癌などのいわゆる生活習慣病の発症には複数の遺
伝子のSNPの組合わせが関与していると考えられている。すでにDNAチップやDNAマイクロアレイという画期的な技術が開発され、何千何万という遺伝子の変異を一挙にまとめて研究・診断できるようになった。SNPは古くから体質と云われていたことに相当するため、オーダーメイド医療の開発などが期待されている。一方、ヒトゲノムにあるおよそ32,000個の遺伝子の中から新たな薬剤を開発するためのターゲットが多数抽出できることが明らかになっている。すなわち、すでに薬剤開発に利用されたタンパク質に似て非なるタンパク質を作り出す類似遺伝子(パラローグ)を選びだし、そのタンパク質の立体構造から新たな薬剤化合物をコンピュータでデザインしようとする「ゲノム創薬」が期待されている(4)。
  21世紀はゲノムとITの時代と言われている。ヒトゲノムプロジェクトがスタートした10年前には、今日のようなコンピュータ、ハイテクマシン、オートメーションロボット、データベース、インターネットを使うという時代の到来は考えてもいなかった(5)。結局、ゲノム研究はそれらの進歩しつつある周辺の最先端技術、IT革命を取り込みながら、まったく新しい遺伝学・ライフサイエンスとして成長してきたといえるし、さらに21世紀の医療に革命を起こすであろうと期待されている(6)。しかし、夢の医療は一朝一夕には実現されない。地道な基礎研究開発が必須である。これから50年を予測してみると、おそらく、今から10年間にゲノム情報によるDNA診断が本格的に普及し始め、ゲノム創薬の使用が開始されるであろう。それと同時にゲノムにもとづく差別が問題視され、それを回避するための法律がいくつも施行されるであろう。20年後には、遺伝子と環境因子の関係が相当明らかになり、生活習慣病である糖尿病・高血圧などの治療薬が完成するかも知れないし、癌の遺伝子治療も画期的な効果を生んでいるかも知れない。さらに、ゲノム医科学によるオーダーメイド医療や予防医学の実現には30年はかかるであろう。もっと先にはヒト細胞の営みの実際をコンピュータシミュレーションできるようになるかも知れない。そして、21世紀の中頃には皮肉なことに、遺伝子医療への拒絶反応が生まれ反対運動が始まるような事態さえ生ずるかも知れない。
 ヒトとチンパンジーは500万年前に共通の祖先から分岐したと言われている。両者の染色体はあまりにも酷似しているし、ゲノムのサイズや遺伝子の並びもほとんど同じである。
しかし、両者の塩基配列は1〜2%も違っている。ヒトの個人差は0.1%であるからこの違いは大きいし、実際には3,000万塩基の違いである。この程度の塩基配列の違いは小さすぎるという見解もあり、塩基配列の違いの中に、ヒトとチンパンジーの本質的な違いが発見されるかどうかについては意見が分かれている。昔からサルはヒトより毛が3本足りないと揶揄されてきた。我々は、最近、体毛の形成に関与する複数の遺伝子を発見した。ヒトとサルにおける体毛遺伝子の比較ゲノム学によって「人間とは何か」という疑問に迫ることができればと研究を進めている。
 ヒトゲノム解読の本質は、われわれ人間の生命の設計図の謎解きという科学的探求であり、知的好奇心の究極のテーマである。人間はDNAの塩基配列に個人差をもつゆえに一人一人違うということの意味を改めて考え、生命の尊厳に関して新しい価値観をもつ努力もせねばならない(7)。

参考文献
1)International Human Genome Sequencing Consortium, Initial sequencing and analysis of the  human genome, Nature 409:860-921 (2001)
2)Dunham, I., Shimizu, N. et al. The DNA sequence of human chromosome 22, Nature402:489-496 (1999);清水信義ら、ヒトゲノムプロジェクトの最前線:ヒト22番染色体から学んだこと、最新医学  6: 2−96(2000)
3) The chromosome 21 mapping and sequencing consortium; The DNA Sequence of Human Chromosome 21, Nature, 405:311-319 (2000)
4)清水信義、ヒトゲノム=生命の設計図を読む(岩波書店)
5)Minoshima, S., et al. Keio Mutation Database (KMDB) for Human Disease Gene Mutations, Nucl Acids Res., 28(1):364-368 (2000) WEBサイトのアドレス (http://www.dmb.med.keio.ac.jp)
6)清水信義、図説ヒトゲノムワールド(PHP研究所)
7)ゲノム塾ホームページ(http://www.genome-station.co.jp)

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